itimoのブログ

有資格業。自分の人生の迷走を記録します。

【第19回】森博嗣氏著「孤独の価値」を読んで

最近、自分は孤独であると漠然とした不安を抱えることが増えていたので、孤独とは何かということを正確に把握したいと思い、本書を読んでみました。

 

孤独が現れるのは、孤独ではない状態からの陥落である、と述べられていて、仕事についても友人関係についても、確かにそうだな、と。楽しさと寂しさというのは、光と影であって、どちらかだけが存在するものでは無く、サインカーブのようなものだ、とあり、自分の視野が狭まっていたことに気付かされました。

 

そして、孤独や寂しさを感じた時、自分がどんな「楽しさ」を失ったのか、また、その「楽しさ」はそもそも実在したものなのか、と考えてみることが重要である、と。考えることは、基本的に自身を救うとのことですが、これには私も同意します。一人で考えるのも良いでしょうが、読書をすると、本書のように、自分には無かった新しい視点をもらえ、その対象についてより深く考えることができるようになります。

 

また、サインカーブを用いた説明の中で、人は、どん底の状態、つまり最も努力をする時ではなく、それに勢い良く向かっている時に、最も寂しさを感じるが、それはその後に力を消費する(努力する)ことへの恐怖であり、結局は疲労や面倒といった「嫌な予感」、すなわち「死への予感」に過ぎない、と。私は、この理系の方らしい考え方に対し、妄想であると一蹴することができない真実味のようなものを感じました。

 

また、孤独を悪であると判断してしまう理由について、人間が持っている本能を利用して、ドラマやアニメ等の多くのエンターテインメントにおいて、仲間の大切さを誇大に扱う傾向があり、孤独が非常に苦しいものだという感覚を受け手に植え付けている、そして、メディアに流れる虚構が一辺倒である、と考察されています。確かに、たとえば数学の問題を解くことが何よりも大事だという人生もあって良いはずであり、鋭い指摘であると思いました。

 

また、仕事にやりがいを見つけることや、楽しい職場で働くことが、人生のあるべき姿だ、というのも作られた虚構であり、それを真に受けて、現実とのギャップに悩む人が増えている、仕事は本来辛いものであり、辛いからその報酬としてお金が稼げる、と。確かに、商業的な宣伝で作られた虚構は、至るところにあり、不必要に踊らされないことが重要であると思いました。

 

また、孤独の受け入れ方について、本当に孤立してしまうような恐ろしい状態の孤独と、静かで落ち着いた雰囲気で創作にも適する孤独とは、現実の状態としては大きくは異ならず、主観的な認識の違いに過ぎない、とのことでした。そして、一番簡単な創作として詩作が勧められていたので、詩を一つ作ってみようと思います。

 

まあ、落ち着きなさいよ

結局、お金の多寡の問題に過ぎない

まあ、落ち着きなさいよ

結局、慣例的に処理されているに過ぎない

 

自分を追い詰めているのは

ほかならぬ自分自身

知らず知らずのうちに一面的な見方になっていたことに

気付くだろう

 

初めての作品にしては、上出来だと思いました。

 

そして、一番大切なことは、自分がやりたいことをすることである、と。やりたいことをじっくりと考える。もっとも、だらだらとさぼっていたい、では、やりたいことが無い状態であって、人間としては死の次に悪い状態、生きているうちでは最悪の状態である、と。

 

それがなかなか分からないんですけどね。できることとしては、気になったことに挑戦してみることくらいなのかな、と。そして、自分がやりたいことが何なのかを考えることすらも、楽しいと感じる姿勢が重要なのだと思いました。

 

総じて、新しい視点をもらった、良い本でした。以上、読んでいただき、ありがとうございました。